この夏、自然で癒す宿

    SINRA 7月号
text by Katori Akiko/photguraphs by Arimitu Kohji

安曇野の旬を味わう玄米自然食

舎爐夢(シャロム)ヒュッテ 

北アルプスの山麓に広がる安曇野は、自然と田園風景がみごとに調和する、風光明媚をうたわれる土地だ。この地に心惹かれて、都会から移り住む人も少なくない。
 その安曇野のカラマツ林のはずれに立つのが、「舎爐夢(シャロム)ヒュッテ」

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この宿は、「田舎暮らし」の雰囲気にひたれるのがいい。オーナーの臼井健二さんは、元山小屋の支配人。「自然にさからわない、自給自足の生活」をモットーに、所有する2反の畑で農作物を育てている。まもなくトマト、なす、きゅうり、かぼちゃなど、夏野菜の収穫期。とれたての旬の野菜を材料に、妻の朋子さんが料理の腕をふるい、宿泊客をもてなしてくれる。

料理は、マクロビオティックを基本とする自然食。玄米と野菜、果物、そして少量の魚介を食べ、肉や卵、乳製品、砂糖はとらない。ベジタリアンの人には、完全菜食(魚介も使わないメニュー)、アトピーの人には、除去食(卵、牛乳一大豆などアレルゲンとなる食品を使わないメニュー)も用意してくれる「自然食は、自然治癒力を高めてくれる、体と心にやさしい料理…なんて屁理屈を言うつもりはありません。たまたまこの宿に泊まって、まちがって玄米を食べたら、おいしかった。そう感じてもらえればいいんです」とは臼井さんの弁。

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朝食は天然酵母の田舎風パンと玄米おかゆパン(手前)。

さっそく、夕食の「季節の自然食フルコース」を味わってみた。メニューは、アぺリティフが、地元産のあんずの焼酎漬けを炭酸で割った「あんずのお酒」。前菜が、畑で育てたそばを粉にして作った「そば粉のクレープ野沢薬包み」。スープが、牛を使わず、小麦粉を昆布だしでのばし、とろみをつけた「きぬさやのチャウダー」。メインディッシュが、高野豆腐にグルテンと野菜をはさんで揚げた「高野サンド」と、煉製器で燻したサーモンを使った「スモークサーモンとかぶのマリネ」。たしかに、どの料理も、素材そのもののうま味が生きていて、理屈ぬきに、おいしい。「自然食は、健康にいいからと、がまんして食べるものじゃない。おいしいからこそ、食べるんです」臼井さんの言葉に、思わずうなずいてしまう。

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そば粉のクレープ野沢莱包み食材から調味料まで、ほとんどが自家製である。

この宿に泊まったら、ひとまず夜更かしの習慣を忘れて、夜明けとともに起きるのが「三文の得」。早朝の空気は、ひんやり冷たく、澄みきっていて、何とも気持ちがいい。6時頃になると、臼井さんが農作業を始めるので、興味があれば、手伝ってみるといい。土にまみれて、野菜や果物を収穫するのは、わくわくするような体験だ。


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自然の木材と白壁を基調とした部屋。家具は英国製のアンティークだ。

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