TANTO 1996.9 撮影/奥谷仁 臼井健二 取材/おおくにあきこ

      おいしんぼ旅行

北アルプスの麓に広がる安曇野。清浄な水と空気に育まれた田園地帯には、自然テイストのおいしいもがいっぱい 日ごろの都会の暮らしを離れて、、新しい味を発見する旅が始まりました。

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野菜のおいしさを生かした食事

上/朝ごはんはビユッフェ形式で、野菜やパスタの大皿から好きなだげ取り分けていただきます。野菜類は臼井さんが朝早くから起きて収獲してきたもの。豆腐マヨネーズやごまドレッシングなど野菜をシンプルにおいしく食べる工夫もいっぱい。カンパー二ュや玄米おかゆパン、手作りみそのみそ汁、玄米コーヒーも

 

 

「わあ、きれいな所!ねえ、私たち、こんなステキな所に来てお泊まりしていたんだね」

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3年がかりで建てた手作りの家

「シャロムヒュッテ」は 椅子やテーブルなどインテリアはもちろん、家自体も臼井さんが山仲間たちと3年がかりで建てたハンドメイドハウス。建てて18年風格がでこそすれ、古びないのはさすが

 

昨晩、暗くなってから到着したから、カントリーイン「シャロムヒユッテ」の前に広大な牧草地があることに気づかなかった。一面に広がる緑の絨毯に露が降りて、キラキラ光っています。「シャロムヒユッテ」の朝ごはんには、オーナーの臼井健二さんが朝一番で採ってきた野菜が並びます。

畑には旬の野菜がいっぱい

2反歩(約600ha)の畑には、みずみずしい葉のリーフレタスやかぶのほか、パンのための麦も栽培。もちろん無農薬、有機栽培。遼くんも臼井さんちの仁くん(5歳)と収獲のお手伝い

 

妻の朋子さん手作りの天然酵母のパンド・カンパーニユも食べ放題です。「この温野菜おいしいね」好き嫌いなくなんでもパクパク食べられる元気少年。「本当、ゆでただけの野菜がこんなにおいしいなんてびっくり。パンもかめばかむほど甘い味がしておいしいわ!」こんなふうに安曇野の第一日目が始まりました。

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緑の向こうに、雪を残した常念岳がそびえています。「空気がいいから、またすぐにおなかがすいちやいそうだね、」

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タ飯は野菜中心に魚を加えたメニュー。サーモンやイワナの薫製も自家製です。この日は、あんずの酒、絹さやチャウダー、そば粉のクレープ野沢菜包み、高野豆腐のサンド揚げ、スモークサーモンと大根のマリネ、玄米ごはん、さつまいものムース、玄米コーヒー。完全菜食やアトピー食、ダイエット食も予約時に受け付けています。

シャロムのパンとデザートをいっしょに作ってみました

「パンはこねすぎるとふくらまないのよね」「そうそう」と朋子さん。

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天然酵母と元種の作り方。

フランスの伝統的な製法です。

●作り方

1 干しぶどう200gを軽く水洗いし。口広の空き瓶に入れ、水をひたひたに入れ、ふたをしておきます。

2 干しぶどうが水を吸ったら水を足し、これを2〜3回繰り返します。プクプクと泡が出始めたらガス抜きとカビ防止のために1日1回、容器を振ってふたを開けます。

3 5〜7日すると干しぶどうが浮いてくるので、ぶどうがカスカスになっていたら、ガーゼに取り出し、エキスを絞ります。これが天然酵母。密閉して冷蔵庫て保存可能。

4 エキス100cc全粒粉125gを混ぜて大きめの密閉容器に入れると、6〜8時間で2倍に発酵します。

5 さらに水150ccと全粒粉200gを加えてこね6〜8時間で2倍に発酵させて元種が完成。冷蔵保存。3〜5日おきに一度、使った分量の粉と水を足せばいつまでも使えます。

 

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1 広口びんに、干しぶどうを人れたら、ひたひたに水を加えます

 

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2 ぶどうが水を吸うたびに2〜3回水を加えて発酵させていきます

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3 酵母に全粒粉を加え発酵させ、さらに全粒粉と水を加え発酵させ元種に

 

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4 元種を使ったら、使った分量の水と全粒粉を足せばいつまでも使えます

 

 ずつしり重いフランスの田舎パン

パン・ド・カンパーニュ

●材料

(20cmくらいのもの2個分)元種200g全粒粉(あれば南部小麦)200g 地粉(あれば長野県産シラネ)290g 自然塩9g 水300cc好みて汗しぶどう、くるみ適量

●作り方

1 大きめのボウルに元種を入れ、水を加えて溶かし粉類、塩、好みて干しぶどう、くるみなどを加え、手でよく混ぜます。打ち粉(分量外)をした台にのせ替え、手でくっつかなくなるまでよくこねます。(こねすぎに注意)

2 ボウルに入れ、ぬれぶきんをかけて乾燥を防ぎながら、1.5倍くらいになるまて溌酵させます(30Cで1時間30分が目安)。

3 半分に切って、丸くし、ぬれぶきんをかけて20分休ませます。

4 外側の生地を中へ中へと丸め込むようにして丸くします。

5 天板の表面に油(分量外)を引いて、丸めた生地をのせ、ぶきんをかけて、2倍の大きさになるまでおきます。

6カミソリで切り目を入れ210Cのオープンで40分焼きます。

 

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1 材料を混ぜ、まとまったら台の上で、手につかなくなるまでこねます

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2 発酵させるときはぬれぶきんをかぶせて生地の乾燥を防ぎます

 

 野葉くずの甘さが隠し味

玄米おかゆパン 

朝の主食や子どものおやつにも、栄養たっぷりで安心。野菜の残りを上手に使って。また、残った玄米ごはんをおかゆにして、Bの粉類を足してもおいしくできます。

●材量

(天板2枚分)

A(玄米2合水1〜1.2リッター だしをとったあとの昆布約10cm キャベツの芯1〜2個 大根のしっぼ3cmまたは同量程度の皮 あればそのほかの野菜くず少々 塩小さじ1)

B(全粒粉1カップ 小麦粉3カップ 塩小さじ2〜3 干しぶどう適量)あればくるみ・ごま適量

●作り方

1 昆布と野菜はせん切りにし、ほかのAの材料といっしょに圧力鍋に入れて火にかけ、重りが周りはじめたら、弱火にして1時間炊きます。

2 @がさめたら、Bを入れてこね5時間からひと晩ねかせます。

3 天板に油をひき、粉(分量外)をはたいてAの生地を流し入れます。

4 あればくるみ、ごまものせて、210Cのオープンで60分焼きます。

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デザートや保存食のレシピがとっても新鮮

「自然のままのおいしさに、ほんの少しだけ手を加えて、さらにおいしくする そんな姿勢がこのデザートにはあるんですね。それに、特別な製菓材料はいっさい使わず、豆腐やごま油など、いつものごはんの材料で作るからとっても手軽なの。栄養のバランスもいいから、子どもの体調が悪くて、お菓子しか食べたくない、というときでも安心してあげられますね」いっしょに作ってみて、新しい味を発見した

とろりと口の中でとろけるさつまいものムース

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これからが旬のさつまいも。まだ暑い日も多いから、こんなひんやりデザートを覚えておくと便利ですね。ソースに使うキャロブパウダーとは、いなご豆のさやを粉状にした健康食品。ココアで代用もできます。

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●材料(φ21p位の耐熱深皿1つ分)さつまいも400g 塩小さじ二分の一 粉寒天大さじ二分の一 水20cc豆乳200cc はちみつ大さじ2 ラム酒大さじ1 ソース〔豆腐100gキャロブパウダー(なければココアでも)大さじ1 はちみつ大さじ1 白ごまぺ一スト大さじ1 塩少々 パニラエッセンス少々 以上の材料をミキサーにかけて作っておく〕

●作り方 

@さつまいもは2pの輪切りにして塩をふり、ふかして皮をむきます。

A粉寒天、氷豆乳を鍋に入れて火にかけ、ひと煮したら火を止めます。

B@Aをミキサーでなめらかにします。

C水にぬらした型にはちみつ、ラム酒を流し入れ、Hも流し入れます。

Dさめて固まったら皿に取り出し、切り分けて、ソースとともに盛りつけます。

  

しっとりとまろやかな風味

豆腐のチーズケーキ

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チーズケーキといっても、チーズやバターなどは使わないヘルシーケーキ。

 

●材料(φ20p前後のタルト型1台分)

皮(地粉75g 全粒粉75g ごま油45cc塩小さじ2分の1 水50cc)たね〔豆腐(大)1丁(320g)レモン汁4分の1カップ 油(あれば油)2分の1カップ 塩小さじ2分の1 はちみつ3分の1カップ バニラエッセンス少々 くず粉大さじ1(水大さじ1で溶く)

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●作り方

1ボウルに皮用の粉類、塩、ごま油を人れて混ぜます。水を少しずつ足してまとめ、丸くのしてタルト型に敷き、190度で15分焼きます。

Aたねの材料をミキサーにかけます。

B焼き上がった@の中にAを流し入れ190度で40分焼きます。さめたら、好みでベリーなどを飾って。

 

軽やかなおいしさ

豆腐マヨネーズ

卵を使っていないので、アレルギーっ子にも安心。ヘルシーで、まろやかなコクがうれしいマヨネーズ。

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●作り方豆腐1丁(320g)、酢2分の1カップ、米油4分の3カップ、塩大さじ2分の1、練りがらし小さじ1、こしょう・セージ各少々をすべてミキサーにかけます。冷蔵庫で保存もききます。

 

自家製ならではのすなおな味

トマトケチャップ

 トマトが安くなるこの時期がチャンス。

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材料

(トマト1.5sを使って)

A〔トマ卜1.5s(2p角切り)玉ねぎ1個(スライス)にんじん30g(みじん切り)にんにく1片・しょうが1片(ともにすりおろし)〕

B(ベイリーフ2枚 粒こしょう5個 粒クローブ5個 唐辛子1本)洗糖大さじ3

C(塩大さじ1酢大きじ3 シナモン・タイム・セージ・パプリカ各少々)

作り方

1Aの材料をすべて鍋に入れ、Bは小さな布袋に入れてから加え、塩少々(分量外)を入れて、半量になるまで煮詰めます。

2途中で洗糖を加え、さらに半量に煮詰めてミキサーにかけます。

3Cの塩、酢、香辛料で味をととのえ、さらに煮ます。熱湯消毒した保存びんに熱いうちにすばやく詰めて、ふたをきっちりし、長期にに保存する場合は、さらに1時聞ほどびんごと湯に入れて煮ます。

 

 安曇野おいしいもの探し

安曇野の辻々に立てられている道祖神を見てまわったり、美術館に立ち寄ったり。そしてその合間には、安曇野ならではの素材を生かしたランチや、おやつ、おみやげを見つけたのでした。

 

安曇野の田舎料理 小幡

「とうじ篭」という小さな柄つきのかごて汁気をきって盛りつけた「おとうじうどん」はご主人の小幡さんにとっても懐かしい安曇野の味です。この地て代々農家を営んできて、納屋を改築して店を始めたのが5年前。朝打ったうどんとそばは実に素朴な味わい。おやきのテイクアウトも。

生坂村に特注しているおやき。具はなすと白菜の2種。しめじもたっぷり入って昔ながらの皮の歯ごたえ。1個200円

納屋を全面的に改築した民家風の店。昔の梁をそのまま残しながら、落ち着いた空間に。安曇野名物のひとつがそば 朝小幡家のおばあちゃんが打ちます。煮干しも使った濃厚なつゆで。700円

庭梅のお酒をはじめイワナの唐揚げ、きのこのあえ物などがついた「おとうじセット」1200円。おとうじうどんはシコシコのみそ仕立てのうどん。

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長野県南安曇郡穂高町柏原

0263.82・8595 AM1O:OO〜PM8:00休み水曜

気軽に立ち寄って味わう店おみやげにおすすめのもの

「福田果樹園」のりんごは昔ながらの育て方、省農薬で安心。ジュース500円、はちみつ(大)2500円。この地の手作りみそも。

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〒399-83 長野県南安曇郡穂高町有明7554 

0263・83・3920

おいしい空気の中で元気よく育っている乳牛からしぼったおいしし牛乳が味わえる「北アルプス牧場直売店」。そして雑味のないストレートなおいしさのソフトクリームに、大満足。

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長野県南安曇郡穂高町有明8208の5 

0263・83.7571

「ジェラートショップ彩香」では、安曇野で採れる季節の果物類をそのままジェラートに仕立てています。

 長野県南安曇郡穂高町柏原4524の4

      0263.82ー4498

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安曇野にだってなかなか悔れないワインがあります。山に自生しているさるなしの木の実をひと粒ずつ採集して作る限定醸造の「さるなしワイン」(360oリットル2200円)はデザートに合うとろりと甘口の豊穣ワイン。また、まろやかな酸味と渋みを持つ「安曇野ルージュ」(720oリットル・2000円)など。いずれも果実のさわやかさが生きています。安曇野の酒屋さんにあります

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  自然のごちそうを満喫する「あづみのの食卓」へ

  

田園の真ん中に料理研究家、久松育子さんの食のギャラリー「あづみのの食卓」があります。

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「最初は東京から通っていたの。だけど、とうとう住みはじめちゃった(笑)。自分で野菜やハーブを育てて、それでお料理を作る、そんな自然のサイクルと合った生活がしたかったんです」と久松さん。

「本当に気持ちのいい所。これまで集められたお気に入りの器や、季節にふさわしい食卓のデイスプレーがしてあって……久松先生のエネルギーが隅々にまで感じられますね。

ここのキッチンから、どんなおいしいお料理ができ上がるのか、本当に楽しみ!」ワクワクしている。今日は、野菜とハーブをふんだんに使ったイタリアンが、畑からキッチンを経て、食卓に並ぶまでをまるごと体験。もちろん気持ちのいいテラスで、のんびりと食事も楽しみました。

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