地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2
)を削減するため、ガソリンや軽油の消費量をどう減らすのか。大阪府茨木市の会社員、和田竹彦さん(53)は「わが家の温暖化対策」として、自家用のディーゼル車に専用キットを取り付け、軽油の代わりに植物油で走らせている。しかもその油は社員食堂から出された廃食油をリサイクル。「植物由来だからCO2
を増やさない。車から出る排ガスもてんぷらのにおいがしますよ」と和田さんは話す。【明珍美紀】

●車をSVO仕様に
ブルン、ブルンとエンジンをふかす。車の後ろに回って排気口に手をかざすと、なるほど、揚げ物やてんぷらのにおいがする。
和田さんの車は、ドイツ車の94年型フォルクスワーゲン・ゴルフ(ディーゼル)だ。植物油を軽油の代替燃料にするといってもそのままでは使えず、加熱して油の粘性を低くする必要がある。市販のバイオディーゼル燃料は、植物油にメタノールや微量の触媒を加えて燃料が燃えやすいよう処理されており、特に車に手を加えなくてもいいが、和田さんの場合はストレート・ベジタブル・オイル(SVO)と呼ばれる普通の植物油。そのため、バイオディーゼル燃料の導入が進むドイツから専用キットを個人輸入し、熱交換機や電気ヒータなどの付属品を取り付けて車をSVO仕様に変更した。
「廃食油で車を走らそうと思った直接のきっかけは3年前、いまの車の調子が悪くなり、どうせ部品を交換するならSVOにチャレンジしようと決めた」。当時、キットの価格は日本円で約12万円。車は、休日の買い物などのほか、荷物が多いとき、通勤に使う程度で、廃油の使用量は1カ月に18リットル入りタンクで4〜5個程度。これまで約2万キロ走り、「燃料代を考えれば十分にもとを取った」という。
●愛車の燃料は廃食油

和田さんは制御機器メーカー「オムロン」の社員。廃食油は京都府木津川市にある職場の社員食堂に頼み、無料で分けてもらっている。まずは100円ショップで売っている家庭用の油こし紙でろ過し、さらに業務用のきめの細かいろ過紙でこしてから給油する。てんぷらのかすなどが混ざっていると詰まる原因になるからだ。時折、近所の人が賞味期限切れのサラダ油を持って来てくれる。「新しい油はそのまま給油できるのでありがたい。こういう近所付き合いもいいもんですよ」と和田さんは笑う。
とはいえ、ディーゼル車ならどんな車でもSVO仕様にできるわけではない。「電子制御で燃料を供給する新しいタイプのエンジンは仕様変更ができないので、旧式の機械制御タイプに限られる」と和田さんは説明。なお、SVOやバイオディーゼル燃料で走るには、運輸局に届け出て、車検証の備考欄に「廃食用油燃料併用」と記載するなど所定の手続きをする。
「燃料をSVOにするには、車が限られ、手間もかかるが、身近なエネルギーを使い、私なりにできることを考えた」と和田さん。会社の同僚、家門利行さん(48)も今年3月から自家用車をSVO仕様に変えて走行。同様にインターネットなどで知り合った「SVO仲間」は全国に15人ほどいるという。
●ごみ収集車やバスにも導入
植物などに由来する軽油の代替燃料はバイオディーゼル燃料が一般的で、90年代以降、ドイツを中心にヨーロッパで生産、導入が進められてきた。ドイツではなたね油などを原料に使用しているが、日本では廃油が多く、年間推計4000〜5000キロリットルを生産(今年3月、農水省調べ)。京都市では97年からごみ収集車に、00年からは一部市バスにも利用し、東京都でも今年10月から一部都バスに導入した。
植物の燃焼によって排出されるCO2 は、もともと光合成によって大気から吸収されたもので、収支がゼロになるという「カーボンニュートラル」の考え方に基づき、IPPC(気候変動に関する政府間パネル)のガイドラインや京都議定書では、SVOやバイオディーゼルなど植物系の燃料の燃焼はCO2 の排出量にカウントされていない。