自動車:欧州で「クリーン・ディーゼル」普及 新型エンジン開発、日本とは違い

 日本でディーゼル車といえば、「黒煙をまき散らす」「うるさい」というマイナスイメージが強い。それが、欧州に行くと違う。燃費が良く、二酸化炭素(CO2)の排出が少ない車としてディーゼル乗用車の普及が進む。背景にはエンジンやフィルター、新燃料などの技術開発がある。旧型ディーゼルとは異なる「クリーン・ディーゼル」は、日本でも普及の余地があるのか。「環境先進国」ドイツで実情を取材した。【青野由利】

 ◇少ないCO2の排出量/ガソリン車よりいい燃費/騒音や振動も減少

 ☆西欧では新車の5割

 「2004年に西ヨーロッパで新規登録された乗用車の50%がディーゼル車です」。シュツットガルト近郊に本社のある自動車機器メーカー「ボッシュ」のエンジン開発担当者が強調した。90年代の2〜3割から急伸し、フランスやオーストリアでは6〜7割に上る。

 軽油が燃料のディーゼル車は、同クラスのガソリン車に比べ燃費が2〜3割良く、CO2の排出量も2割程度少ない。このため、地球温暖化対策に貢献する「エコカー」との考えが強まった。

 90年代後半に、高圧をかけた燃料を霧状にして噴射し、効率よく燃やす「コモンレール」と呼ばれる技術が登場し、排ガスも従来よりきれいになった。この技術を使ったエンジンは「クリーン・ディーゼル」と呼ばれ、騒音や振動も減り、乗り心地もよくなった。

 ☆燃料の改善も進む

 ディーゼルのもう一つの強みは、ガソリンエンジンと違い、さまざまな燃料を燃やせることだ。

 ダイムラークライスラー社とフォルクスワーゲン社は、ベンチャー企業のショーレン社と共同で、「サンディーゼル」と名付けたディーゼル燃料を開発している。

 植物を高温でガス化処理などして作り出すBTL(バイオマス・トゥー・リキッド)燃料の一種で、廃木材などから作っているが、植物なら何でも利用できるという。

 植物燃料から出るCO2は、光合成によって再び植物に戻るため、大気中のCO2の増減には寄与しないとされる。ガソリンや軽油より排ガスがきれいな天然ガスを液化した燃料開発も進む。

 ダイムラー社は「さまざまな燃料を燃やせる利点を生かし、ディーゼルエンジンと燃料の最適な組み合わせをみつけたい」と話す。

 ☆NOx浄化に課題

 ディーゼルエンジンの排ガスは従来よりきれいになったが、主な汚染物質である粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)は、ガソリンエンジンに比べまだ多い。しかし、欧米や日本は排ガス規制を段階的に強化することを決めており、09年から日本が導入する規制をクリアするには、排ガスをガソリン車並みにクリーンにする必要がある。

 欧州の自動車メーカーは、エンジンの改良、フィルターなどによる排ガス後処理技術の開発で対応する方針だ。

 ダイムラー社のディーゼル開発担当のハンスオットー・ヘルマンさんは「燃料の噴射技術の改良などにより、排ガスを後処理せずとも現行基準はクリアできている」と話す。だが、新たな規制に対応するには後処理が必要だ。PMはフィルターで除去できるが、難しいのはNOx削減だという。

 NOx削減は、触媒でNOxを分解するNOx吸蔵還元触媒法と、尿素液を排ガスに噴射して分解する尿素SCR法の二つが主流だ。NOx触媒は耐久性、尿素SCR法は定期的な尿素液の補充が課題として残るが、これをクリアすれば、アジアや米国にも広がる市場を手にすることができる。

 ☆出遅れた日本メーカー

 欧州に対し、トラックなど商用車を除く国内のディーゼル乗用車市場は、壊滅状態に近い。

 現在、ディーゼル乗用車を国内販売しているのはトヨタ自動車だけだ。経済産業省の検討会が今年4月にまとめた報告書によると、ディーゼル乗用車は02年度に販売された新車の0・1%に過ぎない。東京都が大気汚染の元凶としてディーゼル車NO作戦を展開するなど、「環境破壊」の悪役のイメージも定着した。

 経産省の報告書は「温暖化防止に加え、欧州やアジアの市場での競争力を高めるためにも技術開発に期待したい」と指摘する。トヨタ広報部は「ディーゼルの技術開発は重要だが、日本での普及には顧客のニーズやイメージの改善も必要だ。コストにも留意した技術開発とともに、理解活動も進めていきたい」と話している。

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 ◇ディーゼル小型乗用車の排ガス規制値

     実施年月  NOx     PM

欧州 05年 1月 0.25  0.025

日本 02年10月 0.28  0.052

   05年10月 0.14  0.013

   09年    0.08  0.005

 ※単位はグラムで走行距離1キロ当たりの排出量(現行ガソリン乗用車はNOx=0.08、PMは出さない)

毎日新聞 2005年7月10日 東京朝刊