安曇野パーマカルチャー塾2009.10月 第8回レポート

1日目の予定です!

 10月24日(土)          
  13:30 オリエンテーション
  13:40 建築実習@
         建築実習A  
  16:40 温泉
  18:00 夕食
  19:00 グループワーク@
  20:30 レインボーバレーファームのDVD鑑賞
  21:30 一言感想の後フリータイム
  22:00 キャンドルタイム

 
■建築実習(今回の作業メニュー)
 ・生かそう庫・・・壁のモルタル塗り、非電化冷蔵庫周りの断熱(畳張り)、独立した柱の底部をモルタルで沓石作り
 ・カタツムリストローベイル玄関・・・土壁塗り(一部モルタル塗り)、カタツムリ装飾
 
・ルーフトップガーデンの縁石のモルタル固め
 
モルタル塗りは初めのうちはボタボタと下に落としていましたが、杉山棟梁が何回もお手本を見せてくださり、皆真剣に取り組んでだんだん慣れてゆきました。
自然に囲まれながら、仲間との楽しい会話を交えて手を動かし、作業をするのはとても気持ちのよいものでした。
そして、最初は「難しい」、「こんなことできない」と思っていたことが形になって目に見えるようになっていく工程をみなさんと味わえるのは素敵なことだと改めて実感しました。

生かそう庫

いろんなものを生かそうとして始まった家造り 非電化冷蔵庫では廃畳を断熱として使いますし 雨水をタンクを入れて中水道としても使用します。雨水タンクはワインが入ってきたプラスチックのドラム缶 これに籾殻で断熱して使います。屋根は規格外の鉄平石 軽トラックいっぱい2000円を使います。漬け物樽も無料で戴いてきました。漬け物やみそ倉庫として非電化の野菜倉庫としても使用されます。

先ずつなぎに着替え足場を組みました。ガンタッカーでラス網の補修 養生シートを貼って その後軽量モルタルを練って塗り始めました。最初はぎこちなかったけれど終わるころには左官屋さんになれそうな雰囲気でした。

用意したもの 
軽量モルタル 3体 ビデ 足場板 養生 テープ シート シール 舟 角すこ バケツ コテ 手板 塵掃除用の刷毛 ビニール手袋



使用した道具類です。

カタツムリストローベイル玄関

養生テープを貼り付けて 壁土と砂を半々に混ぜたものを塗りました。

壁土と砂をシートを使って混ぜます。砂が入り亀裂防止になります。一部ラス網部分はモルタルを塗りました。

外部はカタツムリや凹凸部分を作り表情が生まれました。

岡本太郎なみの芸塾作品ですね。芸術は爆発だ
岡本太郎が出現したと思いませんか
カタツムリストローベイル玄関の2回目の壁塗りの表情です。
シャンティクティの玄関はスローでゆっくり 
このコンセプトを表すのがこの玄関です。土と曲線の表情がいいですね。まさに芸術作品です。


非電化冷蔵庫部分は畳断熱をするので畳を寸法に合わせて畳み用のジグソウで切っていきます 畳は意外と重く切断も大変です。でもとても良い断熱材ですね。

独立部分はモルタルで沓石を作りました。ルーフトップガーデンの縁石もモルタルで固めました。

  

最後は道具を洗って片付けです。水仕事は大変ですが塗り壁は壁紙にはない重量感がありますね。

生かそう庫ででたワラは畑に返してやりました。今 紅葉の真っ盛りです。

 

■夕食
作業が終わる頃、かわいらしい毛糸の帽子を被って、箱一杯の食材を抱えたタミさ
んが、今日も元気に登場して早速お台所に立ってくださいました。
みんなお腹ぺこぺこと言いながら温泉から帰ってくる頃には今日もいい香りが・・・。
しかしもうそこにタミさんはいなかったのです!(用事があって帰られたとか・・・)
タミさんにお礼も言えぬまま、いつのまにか食べることに必死になっていたレポーターは、すっかりレシピをお聞きするのを忘れてしまいました。
というわけで、あとからうたさんに教えていただいたことをお伝えしますね。
 
あんかけ風の炒め物には、最近栽培が盛んになってきた「まこも竹」(田んぼでできるイネ科の野菜)が入っていたとのことで、シャキシャキした食感がたまりませんでした。


スープに入っているなめたけは、とても大きくてしっかりした歯ごたえと風味が印象的でした。天然ではなく、原木栽培では?とのことです。
(普通に売られてるのは菌床栽培のもの。)
 
デザートは、これまた秋らしく、女性にはたまらない(男性にも?)組み合わせの、隠し味にラム酒が入ったサツマイモと煮りんごのオシャレな一品でした!
 
今日もごちそうさまでした。
 
■持ち寄りのパーマカルチャーあずみの文庫 今回もたくさんの本たちなんだかどんどん増えていますね!食後はここで本をめくりながらくつろぐ姿もありました。
共同作業に食事、本・・・色々なことを通してみなさんとつながり合えることは幸せですね。
 
 
 
■パーマカルチャーを伝える素材作り 
グループワーク@
さて、食後は早速最終課題の追い込み(追い込まれ?)グループワークです。
レシピ班は着々ともう編集の段階までいっているようです。メンバー同士でレシピや写真を持ち寄って、色とりどりの紙面になりそうですね。試食にはぜひ呼んで頂きたいです。
 
今回トモさんも加わって8人になった飛び出す絵本チームはちょっとまだ制作までこぎつけていません。でもみなさんたくさんの資料を持ってきて下さって、色々なアイディアが出てきて楽しいものになりそうです。
写真は、ストーリー案を書いてきたもので、トモ編集長が私にアドバイスをしてくれているところです。すごい的確さでした!
一方、欠席した方が多いところでは1人〜2人になってしまい、困ったという声も・・・。

 
大変ですが、みなさん楽しみながら頑張りましょう〜!
 
■レインボーバレーファームDVD鑑賞

パーマカルチャー 地球とつながる楽園のくらし 〜ニュージーランド 虹の谷の農園から〜   本編 48分

パーマカルチャーにこそ、人間らしき暮らしがある。南半球の楽園ニュージーランド。ここに世界の人々から注目を集める夫婦がいます。夫のジョーはオーストリア生まれ、ヨーロッパでグラフィックデザインや有機農業の仕事などをしてきましたが、1983年都会生活を捨て、夫人の故郷ニュージーランドに移住しました。そして20年近く、自然と共生した自給自足の生活を続けています。そこに貫かれたパーマカルチャーの思想。ジョーとトリッシュはパーマカルチャーの実践者として自らの経験をもとに、多くの人に語りかけています。
  ナレーション:デジャーデンゆかり  パーマカルチャーネットワーク九州企画制作
 
 
 映像が始まると、そこは遠い南の国のはずなのに、なんだかほっと安らぐ光景が広がっていました。暖かい太陽の中、身近な自然が広く深く人の暮らしを包み込んでいます。
まずジョーとトリッシュの楽園での、とある一日の流れの紹介から描かれています。
そこでは家畜も植物も人も、すべての命が平等に輝き合い、互いに支えあって生きる姿が、まるで当たり前のことのように存在しています。
 
 家畜や植物に餌や水をあげ、自分たちが生きる為に家畜や畑の命をいただき、体の一部とならなかったものはもう一度大地の栄養となり、またその大地にはぐくまれた命を頂く・・・。
 
 しかし、そのいかにも自然な心地よい循環の上に成り立つ楽園は、1年や2年で出来たものではなく、ご夫婦の、夢を実現させようとする情熱と、長年にわたって自然を観察し、工夫しながら着実に作り上げていく努力と実践力、そしてなにより自然や人を愛し、これからの人の生き方を真剣に考えるお二人の温かい人柄によって少しずつ形作られてきたことが、お話を追っていくごとに明かされていきます。
はじめはゴースと呼ばれるトゲトゲの低木と植物の育たない粘土質の土に覆われた広大な土地から、たった2人で始めた夢への一歩は、どれだけ先が見えなくて不安なものだったのでしょうか。
そして、夢を形にしてからも、常に新たな可能性を求めて工夫を続ける姿や、それを人々に余すところなく伝え、自然にも人にも限りなく歩み寄ろうとする生き様が本当に素敵で、どれだけの人がご夫婦から勇気をもらい、生きることのすばらしさを再確認できたことだろうと思いました。
 何かと日々の慌しさに大切なものを見失ってしまいがちで、何か動き出そうと思っても便利で楽な暮らしに甘えてしまいがちな私ですが、ジョーとトリッシュから頂いた種を大切に育てて、与えられた命をより輝かせられるように、つながりを大切にしながら目標を持って頑張りたいです。(できるかなぁ)
 
以下、皆さんの一言感想をピックアップします。
 
・循環の流れが目に見える形で存在していて、それが自分が自然の中に取り込まれているという安心感、心地よさにつながっている気がする。
・コンポストトイレでの循環、畑での循環、水の循環・・・すべての循環が一つ一つ独立しながらもつながりあって機能しているのがすごい。
・ご夫婦のイメージ力や行動力、人を惹きつける力がすごい。強さと穏やかさをあわせ持った包み込むような人柄が素敵。
・生きることを楽しんでいる姿が印象的。このような生き方をしたい。
・人も動物も植物も、皆生き生きと輝いている!ムリもムダもないバランスのよい生き方がここにある。
・日本で個人が同じような生活を取り入れようとすることは不可能かもしれないし、実際苦しいこともたくさんあると思う。まずは自分たちにできることから始めたい。

感想を述べあった後は こうさんのユトリーズ参加を祝って乾杯 ユトリーズメンバーはシャロムのパーマカルチャー安曇野の別荘 森の家で延泊 ランプの下の薪ストーブで調理  ゆったりした時間がながれました。
写真は和綿の糸紬をしているところです。衣の自給もめざしガンジーのように生きたいものです。


10月25日

■1. 紅葉狩り
二日目の朝は紅葉狩りからスタート。目的地は、七色に紅葉するという大峰高原大カエデです。外はまだ薄暗い午前6時に、車に分乗してシャンティクティを出発しました。以前に操体法を習った際にお世話になった成就院への入口横を過ぎて、道なりに進みました。

大峰高原に着く頃には、空が明るくなっていました。大カエデは、見事な一本立ちで、大木のためか紅葉の進み方が一様ではありませんでした。『七色』という謳い文句も頷けます。
大カエデから少し坂をくだった所には、新カエデがありました。新カエデは紅葉していなかったものの、楓の実がたくさんついてました。ここで梅ちゃんからの豆講座、楓の実はプロペラのようにくるくる回りながら落ちていきます。
実の周りには細かい筋が走っていて、プロペラの様に回転するのに必要とのことです。
残念ながら日の出はみれませんでしたが朝の凜とした空気と紅葉に満足な朝の時間でした。


 

大カエデの周囲には、写真を撮影している人が10人ほどいました。大カエデ脇に、椅子などの小道具を持参して写真撮影をしている様子の二人組がいて、遠目には男性と女性に見えました。
かとしゅんは近くに行って、男性二人組であることを確認していました。
あくなき探求心に関心 (^^

■2. 農業実習
紅葉狩りから帰ってきたら、農業実習です。まずは各班の畑から収穫。
自分の4班は、インゲンマメの種を取ることができました。

続いて、共同の畑からの収穫。まずは小豆。
枯れた実を、鞘ごと取ります。そして雑穀(もちきび、粟)。
もちきびは少し遅かったようで、かなり脱粒していました。
粟の葉の鮮やかな紅色が印象的でした。

  

続いてさつまいもの掘り出し。
さつまいもの手掘り方法をうたさんが説明するそばから、健さんが備中鍬で次々と掘り出していきました。

実習中に習った、さつまいもの豆知識です:
* さつまいもを長期保存をするときは蔓をつけたまま掘る。
* 掘り出しは、霜が降りる前にすること。
* 保存は一週間陰干しで乾燥させる。
* 5度以下にしておくと腐る。貯蔵適温は12〜13度。
* さつまいもを掘ると土が痩せるのでなるべく土を動かさないのがよい。
   連作は問題なく、むしろ同じところにつくると良くできる。
* さつまいもの茎と葉は調理して食べられる。

続いては里芋。里芋の掘り出しは、長野県のような寒冷地の場合、霜が下りる前に取るそうです(関東以南では春まで掘らないで置いておくことも可能です。
ただし、その場合はわらなどで覆うなどします)。
まず地表の茎・葉を刈りました。
この茎・葉は食べられるそうです。
そして芋に傷を付けないよう、茎から少し離れた場所へスコップを入れ、堀り起こしました。
種芋の上に親芋ができ、親芋の周りに小芋がすずなりにできます。親芋も食べられます。
なお種芋は、収穫の時にはなくなっています。

http://ja.wikipedia.org/wiki/芋茎 ずいき

ここで、畑を耕となぜ良くできるか。
これは耕すことにより有機質が分解され腐食にかわります。
ですから野菜は良くできるのですが土地はやせてしまいます。
耕せば耕すほど土地はやせてしまいます。
温度が高いのも有機質が分解されます。
ですから熱帯雨林の大地は砂漠のようにやせています。
木が栄養分を蓄えています。

続いて、タマネギの苗を植えました。定植の条件は以下の通り:
* すじ間 20cm, 株間 15cm。
* 苗を植えるときは、根が大きく広がるように植えること。
* 深さは 3cm 程と、少し深く植える。なぜなら越冬の際に霜が降りて苗が浮いてくるから。
* 定植時、成長点を土で覆ってしまうほど深すぎると成育が止まるので、成長点は大気中に出すこと。

実習時に習った、ネギ栽培の一般的な知識です:
* ネギは一般に定植時に水がなくても問題ないが、定植が遅れていて、あまりに乾きすぎている場合は水をやります。
* ネギは多湿を嫌うが、タマネギは水が好きなので、水はけよく、かつ水持ちのよい土地がよい。
  乾いたところではよくできない。
* タマネギは土中養分をたくさん必要とする(地力が必要)。追肥として米ヌカをまいても良い。
* 収穫は6月で、春から収穫までの間、草が出てくるので、草取りが必要です。

続いて、落花生の収穫です。うたさんが畑の状況を折々見て頂いていたのですが、今回、落花生は花を見かけなかったそうです。
なので、収穫をあきらめて株を引き抜いたら、土中にたくさん実がなっていてみんなびっくりしました。
花が茎の根元に咲いていた可能性があったそうです。
なお、引き抜いた株の根には、根粒菌のコブがたくさんありました。
この落花生の根粒菌のコブは、畑にきちんともどしておきました。
来年の塾生たちの作物に、きっと役立つでしょう。

健さん曰く、土が十分に肥えていると、根粒菌のコブはできないそうです。
根粒菌のコブは、割って断面が赤いなら窒素固定がされており、断面が白いなら窒素固定がされていないそうです。

次は、麦(アオバ)まきです。平鍬で根切りをしてから、種をすじ撒きにしました。
種を撒いた後は、土を軽くかぶせても良いし、鍬で梳き込んでも良いそうです。
麦踏みは、自然農であればしなくても大丈夫、とのこと。
上に草マルチをするからでしょうか、それとも周囲の自然環境との調和が取れて丈夫に育つからでしょうか、
理由がよくわかりませんでしが、百聞は一見にしかず、どのように育つかが楽しみです。
Kenji-iwrite
自然農では右肩上がりのもっともっとというベクトルでなく これをしなくても良かったんではないかという方向を目指します。草でマルチをしてあれば霜柱で種や苗が浮き上がることはありません。ですから麦踏みも必要ないのです。
以下が霜の降りた状態です。草のあるところでは霜柱はたちませんが耕したところは霜柱によって種や株が浮き上がってしまうのです。



なお今回は、先ほど収穫したきび・粟の茎・葉でマルチしました。

さて、いよいよ種取りです。まずはキュウリの種取りから。
種取りは、果実を完熟させてから行います。ちなみに我々がふだん食べる青くて細長いキュウリは、実は未熟状態のキュウリです。
では完熟キュウリはどんなものかというと、黄色くてとても大きく、なんというか、でろっとした物体でした。
キュウリは未熟の方がおいしそうに見えます。
このでろっとした完熟キュウリから取り出した種は、周りにゼリー状の物質がついてます。
このゼリー質はそのまま水洗いしても取れるそうですが、瓶詰めにして1〜2日間発酵させるととりやすくなります。
実際に発酵させたものを見せてもらえました。
このようにしてゼリー質と分離した種を水に浸し、沈んだ物を播種に使います。
取った種は、天日干しで乾燥させます。ネットに入れて水漉しをすると、そのまま乾燥できて楽(新聞紙の上に広げて乾燥させている場合は、風に吹かれて飛んでいかないよう要注意)です。

次にトマトの種取り。キュウリは黄色になるまで置きますが トマトは食べれるものは完熟です。
トマトも、種の周りにゼリー質があります。このゼリー質の取りかたは、キュウリと同じく瓶詰め発酵をすると楽に取れます。
そしてゼリー質と分離した種を水に浸して、沈んだ物を播種に使います。

次は唐辛子の種取り。乾燥した完熟唐辛子を開いて、唐辛子を料理に使うときのように、種を取り出します。そして種をそのまま乾燥させます。

次はカボチャの種取り。カボチャは、種をよく水で洗って果肉を取り除きます。カボチャの種は通常水に浮くので、キュウリやトマトのような選別は必要ありません。
うたさんは以前に、あるカボチャから取った種が全て水に沈んだ経験が一度だけあったそうです。

次はナスの種取り。やはりナスも完熟させた果実から種を取ります。
唐辛子のような種が取れます。
ナスは種ができるまで時間がかかるので、最初に結実した実をそのまま種取用に残すと良いそうです。

今回の農業実習も、非常に多くのトピックを扱いました。レポートを書くことが良い復習になります。

[うたさん記]
落花生は這い性と立ち性があり、今回作ったのは立ち性でした。
私は今まで這い性しか作ったことが無かったので、根元で花が咲き、根元にまとめて実が成るとは、知らなかったのですー。とにかくびっくりしました。(笑)

■3. 自然エネルギー
農業実習の次は、自然エネルギー講座です。

●3.0. 講座の内容に先立って
自然エネルギー講座に際して、まず、『電力』と『電力量』を次のように定義します(簡便のため、交流でもこの定義に従います。また講座中でもこの定義に基
づいていました)。
* 電力 (W) = 電圧 (V) * 電流 (A)
* 電力量 (Wh) = 電力 (W) * 時間 (h)

例:
消費電力 40W の白熱電球は、電圧 100V の交流電源では、 0.4A の電流を使用する。
消費電力 40W の白熱電球を5時間点灯させると、 40W * 5h = 200Wh の電力量を使用する。
消費電力 40W の白熱電球が 1000Wh = 1kWh の電力量を使用するのに要する時間は、 1000Wh / 40W = 25h 時間である。

1kWh あたりの電気料金は、全国平均で現在(2009年10月18日)約22円です。従って、消費電力 40W の白熱電球を25時間点灯させると 1kWh の電力量を使用するため、約22円の電気料金が発生します。

以下、講座の内容です。話題が多岐に渡るため、話題の順序を再構成して箇条書きで記します。

●3.1. 種々の数値目標について
1家族人数の全国平均2.6人、電気料金の全国平均は月額約9000円。

二酸化炭素削減目標値について。
* 自民党政権下では、2050年の目標値は50%削減だが、2020年の目標値は『2005年比で15%削減』。自民党のビジョンは『後回し』。
* 民主党は『1990年比で25%削減』を目標とした。実現可能性はまだ不透明。

日本の自然エネルギー供給量を2020年に全体の10%にまで上げる数値目標がエネルギー政策にある。
* 脱石油文明としての農的暮らしが今後ますます重要になってくる。
* 都市部は、自然エネルギーの利用に先立ち、徹底的な省エネに注力すべき。例:自販機をなくす、人感センサー照明で人のいるところだけを照らす。
* 農村部は、自然エネルギーを利用する。

●3.2. 風力・水力・太陽光の発電方式について
* 自然エネルギーの取得方法は、世界では風力発電が一番人気。日本は建築基準法で15mを超えて建てられないため、風力発電の人気は下火。
* 水力発電は、風力発電や太陽光発電と比べて効率が良いが、近隣に水があるかどうかや、水利権が関連するため、万人向けではない。
* 太陽光発電、シャンティクティには 134W パネルが2枚設置されており、平均100W の電力が利用できる。

3.2.1. 風力発電
日本の建築基準法の規制により風車の大きさに限界がある。日本で建造可能な小型の風車では、安定して電力を生成するためには常時 4.5m/s の風が必要。この風速では、軒先で風がなったり、洗濯物が干せなかったりする。おのずと設置可能な地域が狭められる。

日本の風力発電は、風力発電の売上げが地元に還元されない。デンマーク方式はその反対のため、インセンティブが働き、自然エネルギーの生産量が上がった。

風車を人の住宅の近くに作ると、低周波公害などの様々な問題があることは、ずいぶん前から英国の事例に基づいた指摘がなされていた。しかし、日本ではそれを無視し、住宅の近くに業者が風車を次々と建造したことで、近隣住民との間に問題を起こしている。

3.2.2. 水力発電
小型水車は、発電のために高い落差が必要。水源があれば、トライするに値する。配管に工夫と技術力が必要。パイプ径は大きい方が流速が上がる。

稼働中の水力発電で生じる問題と対策
問題: 取水口にゴミがたまる。気泡がパイプに入り込んで水圧と流速が下がる。
対策: 取水口のゴミは大雨の後に取り除くようにする。気泡は、エア抜き(パイプに極小径の穴を空けて空気を逃した後、その穴を再度塞ぐ作業)をする。

※水力発電でタービンを回す水車の実物を見せて頂きました。直径は 30cm ほどでしたが、金属性でずっしりと重かったです。

3.2.3. 太陽光発電
家庭の消費電力の半分を賄う目標を持ってみよう(家庭の電力の半分を自給する)。家庭で 3kW 消費しているなら、そのうち太陽光発電で 1.5kW まかなってみる。導入・施工業者は、トラブル対応を考えると、遠くの有名な業者より近くのすぐに来てくれる業者を選ぶとよい。目安: 2時間。

太陽光発電導入の国際比較:
* ドイツ: 太陽光で発電した電力すべてを買い取る制度になっている。
* 日本: 太陽光で発電した電力のうち、自家消費を除く、電力会社へ供給した分だけを買い取る制度になっている。
→日本では制度が足かせとなって、太陽光発電導入のインセンティブが低い。

ソーラーパネルをたくさんまとまると、鏡のように太陽光を反射するため、反射光を受ける住民にとっては迷惑になることもある。

キューバ製結晶型太陽電池のサンプルを見せてもらえました。
* 太陽電池のセルは、結晶型は長寿命。
* ハンダは劣化して錆びる(白い粉末状の物体が表面に浮いてくる)。
* 結晶型ユニットの寿命はハンダ部に影響される。
* ハンダ部だけを交換することは困難(パネル作成の際にクリーン環境が必要だから)。

太陽光発電のエネルギー回収とコスト回収年数について。
* 最新のデータでは、エネルギー回収は、1.5年〜3年で可能。
* コストの回収は、14年程かかる。
* 論者の中には、意図的に古いデータを引用して『太陽光発電はエネルギー回収・コスト回収ができない』と主張する学者がいる。

[Tomo追記] 論者の名前をネットで検索したり、その人物の著作物の書評を調べることで、その人物の主張を様々な視点から検証できます(例:学者が自身の専門領域について言及しているか、それとも専門外の領域について言及しているか。論者が特定の企業の資金援助(研究費など)を得ているかどうか、などです)。なお、このようなメタな情報についても、その発信者や発言が掲載されているメディアの特性を考慮すると良いと思います。

●3.3. 電球の実験と消費電力の『見える化』
白熱電球、コンパクト蛍光管、 LED 電球の三者を、実物を使って比較してみました。


コンパクト蛍光管の特性:消費電力は約22W、全方向に光を出す。
LED 電球の特性:消費電力は約7W、光は下向き。

非接触型の電流計を使用して、消費電力を実測テストしました。
- LED: 0.05A 使用 → 消費電力実測値 5W
- コンパクト蛍光管: 0.11A 使用 → 消費電力実測値 11W
- 白熱電球: 0.42A 使用 → 消費電力実測値 42W

なぜ消費電力を実測するかというと、エコを謳う電器製品のメーカー公称消費電力が、実際の消費電力と大きく異なる場合があるから。実例として、山小屋で『エコ』冷蔵庫を太陽光発電で使用していた所、メーカーの公称値よりも消費電力が大きく、電気関連のシステムがうまくいかなかったトラブルがあった。

欧米では、家庭内の消費電力の『見える化』が進んでおり、分電盤のデータを無線やネット経由で確認できる。それにより、家庭内の個々の電器製品を on/offしながらデータを見ることで、製品の消費電力の実測値を知ることができる。日本は、欧米の流れに逆行しており、『見える化』を進めようとしていない。

スマートグリッドとは、 "IT を積極的に用いて、供給者と消費者のあいだの電力伝送における課題を解決しようという概念であり、計画のこと" (Wikipedia)

スマートグリッドによってもたらされるもの:
* 家庭のコンセントごとの消費電力の『見える化』。
* インターネットと家庭の電気の融合。
* 家の外から、家庭の電気の on/off ができたり、消費電力を知ることができる。

■4. ブランチ
早起きして、体を使って、頭を使ったあとに、とってもうれしいごはんの時間です!



本日のメニュー:
* 今朝収穫したさつまいものご飯。さつまいもはオーブンロースト。
* シチュー(カボチャ、里芋、インゲン、玄米粉)。
* ニンジンの葉のチヂミ。つなぎは地の粉を使用。
* さつまいもの茎・葉の醤油炒め。
* 小松菜とチンゲンサイの炒め物。
* 大根とルッコラのサラダ。タマネギ醤油ドレッシング和え。
* パン。
* ミニトマト。
* りんご。
* 塩で煮たリンゴジャム。

自然の恵みを活かした素敵でおいしいご飯を、塾で毎回頂いています。ついつい、食べすぎちゃいます。
今回も、やっぱり食べすぎました。

■5. 自然エネルギー2
午前に引き続き、自然エネルギー講座です。午後は、太陽光発電の機材の扱いに関する実学でした。聞き落としてしまったかもしれない内容があるので、自分で調べた内容を追記しました。

●5.1. 負荷容量、設備容量、日射量
太陽光発電の負荷容量と設備容量には、以下の関係があるそうです:
負荷容量(一日の消費電力量)を 2.6 (一般住宅用)または 2.3 (バッテリーの付いた独立系)で割ると、設備容量(標準として定められた条件の元で得られ
る電力出力。単位: Wp ワットピーク)が計算できる。設備容量に 2.6 または 2.3をかけると、負荷容量が計算できる。

例:シャンティクティは、設備容量 268Wp の独立系太陽光発電システムを持つ。このシステムの負荷容量は、 268Wp * 2.3 = 616.4 W である。

太陽光発電のミソは、いかに多くの直射日光を受け取ることができるかどうかにかかっています。

日射量を最大化するために、太陽の移動に追随してパネルの角度・方位をコントロールする太陽光発電装置もあり、パネルのコントロールに要するエネルギーと、コントロールによって得られる日射量の増加分を比べて、コントロールした方が有利ならしても良いそうです。

日射量(太陽からの放射エネルギー。単位: kW/m^2, 1平米ごとの kW 数を意味)と発電量の関係:
* 日射量は正午をピークに変化する。
* 午前10時〜午後2時までの日射量が、一日の日射量の3/4に達する。
* 日射量は、季節、パネル取付角度、取り付け方位によっても変化する。
* 松本の2000年の年間平均全天日射量は 4.37 kWh/m^2 だった。

全天日射量とは、全天空からの日射量を測定したもの。全天日射量は水平面で受けた放射照度として測定・記録されるのが通例である (Wikipedia)。

[Tomo追記] ソーラーパネルの公称最大出力の数値は、JIS C8918で規定するAM1.5、放射照度1000W/m^2;、モジュール温度25℃での値であることが多いです。
例:三洋電機の HIP-210NKH5の場合、公称最大出力は 210W です。松本の2000年の年間平均全天日射量 4.37kWh/m^2 を、このモジュール1枚で変換して得られる電力のカタログスペックは 210W * 4.37 = 917.7 Wh です。
一方、先に記した負荷容量と設備容量の関係で用いた係数 2.6 (または 2.3) は、この年間平均全天日射量より低いです。
これは、太陽光発電システムで電力を得る際、日射量の通年変化や、太陽光発電システムの損失などが関連していると考えられますが、理由は調べた限りでは判明しませんでした。
なお産総研の web サイト (http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/output/measure.html)には、『地域や設置条件などにもよりますが、日本の平均的な環境においては、1kWp 分のパネルを用いた設備は、一般的には1年間に約1000kWh前後を発電します』との記述がありました。

●5.2. 太陽光発電システム構成
太陽光発電システムの構成を見ました。

太陽電池・・・一枚の太陽電池をモジュール、システムで架台などで組まれたものをアレイと呼ぶ。モジュール内部には、太陽電池セルやシートといった発電素子が組み込まれている。

逆流防止ダイオード・・・太陽電池とバッテリーを直接接続する特殊な利用の方法においては、夜間などにバッテリーから太陽電池へ電流を逆流させないために用いる。

バッテリー・・・太陽電池の発電電力を蓄える。また太陽電池の発電電力は日射量に応じて変化があるので、バッテリーを利用することで、日夜を通じていつでも電力が利用できるようになる。
バッテリーのシステム電圧は、基本的に DV 12V である。一定の大きさ、例えば 500Wp を越えるような太陽光発電システムの場合には、倍の DC 24V を利用する。
日本では 30V 未満であれば取扱いに特殊な資格を必要としないため、 DC 12V や DC 24V が一般では選択されている。
複数バッテリーを組み合わせて大容量の充電池を構成する場合、これをバッテリーバンクと呼ぶ。

直流負荷・・・乾電池にはプラス極とマイナス極があるが、このように時間が経っても極性が変わらない電源を直流電源と呼ぶ。直流負荷とは、直流電源で利用できる電気製品・器具のこと。
直流負荷の多くは、プラスとマイナスを逆に接続すると破損する。

充電コントローラ・・・太陽電池の発電電力を効率良く安全にバッテリーに充電していく機能を持った装置。過充電・過放電防止の機能や、夜間のバッテリーからの逆流防止機能もある。
バッテリーは、過充電や過放電によりダメージを受けて痛んでしまうので、それをコントロールする必要がある。

DC-AC インバータ・・・直流を交流に変換する装置。太陽光電池は直流を出力する。
これを家庭用電化製品で使用するために使用する。

系統連系用インバータ・・・家庭で行う太陽光発電の電力と、電力会社の商用電源網をつなぐ回路。直流・交流変換や周波数の同期をし、安全保護回路を含む。

※注意事項1: 電圧が低い直流電源でも、配線や利用によって、プラス極とマイナス極をあやまってショートさせないように注意すること。
ショートにより、機器の破損、加熱による火災の危険がある。太陽電池は、大電流を瞬間的に放電できるエネルギーポテンシャルを持っている。
バッテリーの端子は、ガムテープなどで覆っておくこと。

※注意事項2: 液式バッテリーは、転倒させると電解液(希硫酸)がこぼれるので注意する。
ゲルバッテリーは電解液の代わりにゲルを使用するので、液漏れや液の飛散がない。
バッテリーは充電時に水素ガスを発生するので、近隣に火気や火花の発生する装置(モーターなど)を置かない。

太陽電池やコントローラは中古が流通し始めており、購入時の品質を見抜く必要はありますが、安くシステムを組めるようになってきたとのことです。
また、液式のバッテリーは回収・処分の流通が確立しているため、程度の良い使用済みバッテリーを使用することが可能とのことです。

●5.3. シャンティクティのシステム
シャンティクティは、 134Wp のパネル2枚が、コントローラを介してゲルバッテリーのバンクに接続されていました。
このシステムはコンポストバイオトイレ脇の廊下に設置されており、その出力は非常電源としての使用と電源の必要な電話のサブシステムや PC などに使用されています。
独立系のシステムは停電の時のバックアップとして重宝します。

[Tomo追記] まかなう必要がある電気製品がノートパソコンと携帯電話くらいであれば、十分に電力を自給できそうです。
 WiMAX などの技術でインターネット接続を無線化できれば、モデムなどの機器を使わなくて済むので、使う電気を節約できそうだなと思いました。

●5.4. 工事と資格
家庭内の電気網は通常 AC 100V が流れているため、電気工事士の有資格者でないと工事できません。第二種電気工事士は、第二種電気工事士試験に合格すれば、すぐに免状が交付されるそうです。太陽光発電のシステムを設置する際にも、 AC 100V の配線をする場合はこれが必要とのことです。

■6. グループワーク
各グループに分かれて、グループワークを行いました。前回・前々回と欠席した自分は飛び出せ青春チームに入れてもらいました。ありがとう。

次回11月の塾での集まりで作業を進めることを期待しないように、と梅ちゃんからの指摘がありました。
がんばらねば。

全体の振り返りでは、モルタル塗りが楽しかったという声や、自然エネルギーにチャレンジしてみたいという声が上がりました。



以上、2009年10月25日のレポート by Tomo でした。